限度額適用認定証
「限度額適用認定証」とは?
限度額適用認定証とは、わかりやすく言うと「医療費が高額になったときに、支払い額を一定のでストップしてくれる書類」です。
健康保険証の発行元に申請すると、1週間ほどで届きます。病院に提示することで、高額な医療費を軽減できます。最終的な支払額は高額療養費制度と同額ですが、一時的な出費を最小額で抑えられるというメリットがあります。高額な医療費がかかりそうなときや、退院までに1週間ほど余裕がある場合は、早めに手続することをお勧めします。
【重要ポイント3選】
「具体例」を教えてください。
- 大腸がん
- 2週間入院
- 医療費100万円(10割計算)
例えば、大腸がんの手術で2週間入院したとします。
このとき、医療費が100万円かかるとします。保険が効く治療の場合、3割負担の方は30万円になります。ここで限度額適用認定証を利用すると、自己負担金が、30万円から約9万円へ減額されます。
(正確には、87,430円です)
実際の金額は、収入の状況などによって異なります。
「利用できる人」とは?
公的な医療保険にご加入の方であれば、誰でも利用できます。
つまり、健康保険証を持っていて、保険料の滞納がなければ大丈夫です。
- 利用できる人
- 保険証を持っている
- 保険料の滞納がない
公的医療保険 (保険者) | 加入者 (被保険者) | 相談窓口 |
---|---|---|
健保組合 | サラリーマン(大企業) | 健康保険の担当部署 |
協会けんぽ | サラリーマン(中小企業) | 協会けんぽの管轄支部 |
共済組合 | 公務員、私学教員 | 共済担当者 |
国民健康保険 | 自営業、フリーター | 市区町村の健康保険課 |
国民健康保険組合 | 特定の業種 | 組合担当者 |
後期高齢者医療制度 | 75歳以上 | 市区町村の健康保険課 |
「対象の治療」とは?
保険が効く治療や薬であれば、全て対象です。「保険が効く(保険適用)」とは、3割負担で受けられる治療のことです。
- 対象
- 保険適用
- 保険料の滞納がない
例えば、三大疾病(がん・脳卒中・心筋梗塞)だと、ざっくり下記の金額となります。(年収400万円のサラリーマンの場合)
総医療費 (10割) | 自己負担額 (限度額適用認定証) | |
がん | 100万円 | 約9万円 |
脳卒中 | 200万円 | 約10万円 |
心筋梗塞 | 200万円 | 約10万円 |
有名な病気は、ほとんど保険が効く治療法や薬を使います。仮に保険適用外の治療が行われるとしても、患者さんの同意なく行われることはありません。
ただし、あくまでも高額になった場合に使える制度なので、普通のインフルエンザ治療のように、数千円で済む治療には使えません。
「対象外の治療」とは?
「保険が効かない」治療や薬などは対象外となります。
以下の費用は対象とならず、全額自己負担となるのでご注意ください。
- 対象外
- 先進医療(例:がんの陽子線治療、重粒子線治療)
- 自由診療(例:美容整形、人間ドック)
- 差額ベッド代(個室、少人数部屋代)
- 入院時食事療養費(病院食のこと)
- 交通費、駐車場代
例えば、がんの手術で2週間入院したとします。
月を跨がず入院し、医療費が100万円とします。限度額適用認定証を利用すれば、自己負担額は約9万円です。しかし、入院中の病院食は、通常1食460円の自己負担額がかかります。単純計算で、1日3食×14日間とすると19,320円かかります。つまり、実質の自己負担額は、治療費約9万円+食事代約2万円=約11万円となります。
病院食 | 自己負担額 |
1食 | 460円 |
1日 | 1380円 |
1週間 | 約1万円 |
2週間 | 約2万円 |
1ヶ月 | 約4万円 |
入院時に、1日3,000円の差額ベッド代がかかる個室に入った場合、2週間で3,000円×14日=42,000円が追加でかかります。
また、限度額適用認定証は、3割負担でも高額になる時のための制度です。逆に言うと、3割負担にならない医療費には適用されません。
「いくら」医療費が安くなりますか?
(例)全国健康保険協会(協会けんぽ)、年収400万円
がん治療で2週間入院して、医療費が100万円かかったとします。(この100万円は、3割負担にする前、つまり10割計算の金額です。)この場合、212,570円安くなり、自己負担額は87,430円となります。
医療費 | |
---|---|
10割計算 | 1,000,000円 |
3割計算 | 300,000円 |
割引額 | -212,570円 |
自己負担額 | 87,430円 |
この計算について、順を追って解説します。まず、通常の自己負担金は、100万円の3割負担計算で30万円です。しかし、年収400万円の人にとって自己負担30万円は「高額」のため、高額療養費制度の自己負担限度額が適用されます。この人に適用される計算式は、以下の通りです。
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
上記の式は、「80,100円までは3割負担で頑張っていただきますが、それ以上は高額なのでほとんど増えないようにします。」といった意味合いです。
よって、改めてこの式に総医療費100万円を入れると、
80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1% = 87,430円
となります。
元々の3割計算30万円と、この87,430円の差額212,570円分が安くなります。この差額212,570円を「高額療養費」と言い、高額療養費制度を利用した場合は3〜4ヶ月後に払い戻しされます。病院での支払いまでに限度額適用認定証を用意できれば、会計時に87,430円を支払い終了となります。
高額療養費制度と最終的な自己負担額は同じですが、一時的に支払う金額を大きく抑えられます。会計に間に合うのであれば限度額適用認定証を利用し、間に合わなければ後から高額療養費制度で払い戻しを受けましょう。
なお、年収(計算上は標準報酬月額)と上限額の関係は、下記の表の通りです。上記の例は「③区分ウ」に該当します。
(国民健康保険の方は、所得の計算方法が異なります。)
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数該当※2 |
---|---|---|
① 区分ア (標準報酬月額83万円以上の方) (報酬月額81万円以上の方) | 252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1% | 140,100円 |
② 区分イ (標準報酬月額53万〜79万円の方) (報酬月額51万5千円以上〜81万円未満の方) | 167,400円+(総医療費※1-558,000円)×1% | 93,000円 |
③ 区分ウ (標準報酬月額28万〜50万円の方) (報酬月額27万円以上〜51万5千円未満の方) | 80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1% | 44,400円 |
④ 区分エ (標準報酬月額26万円以下の方) (報酬月額27万円未満の方) | 57,600円 | 44,400円 |
⑤ 区分オ(低所得者) (被保険者が市区町村民税の非課税者等) | 35,400円 | 24,600円 |
- ※1総医療費とは保険適用される診察費用の総額(10割)です。
- ※2療養を受けた月以前の1年間に、3ヵ月以上の高額療養費の支給を受けた(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)場合には、4ヵ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減されます。
「区分ア」または「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分ア」または「区分イ」の該当となります。
「いつ」適用されますか?
病院の会計時に適用されます。
限度額適用認定証は、申請から1週間ほどで手元に届きます。会計時に間に合うのであれば限度額適用認定証を利用し、間に合わなければ後から高額療養費制度で払い戻しを受けましょう。
「支払い済み」の医療費に使えますか?
- 「支払い済み」の医療費に使えますか?
-
いいえ、使えません。
限度額適用認定証は、「これからの」支払いを減額する制度です。既に支払った医療費には限度額適用認定証は使えせん。
- 支払い済みの医療費に利用できる制度
- 高額療養費制度
- 医療費控除
高額療養費制度
すでに支払い済みの医療費については、高額療養費制度で払い戻しを受けることができます。高額療養費制度は過去2年間分が有効です。高額な医療費を支払った方は、一度、保険証の発行元へご確認されることをお勧めします。
医療費控除
年間10万円以上の自己負担額が発生した場合は、医療費控除の対象となります。翌年の確定申告時に医療費控除を申請することで、所得控除が受けられます。併せてご利用ください。
「申請費用」はかかりますか?
いいえ、申請費用はかかりません。無料で申請できます。
「相談窓口」はどこですか?
ご加入の公的医療保険の窓口です。
公的医療保険 (保険者) | 加入者 (被保険者) | 相談窓口 |
---|---|---|
健保組合 | サラリーマン(大企業) | 健康保険の担当部署 |
協会けんぽ | サラリーマン(中小企業) | 協会けんぽの管轄支部 |
共済組合 | 公務員、私学教員 | 共済担当者 |
国民健康保険 | 自営業、フリーター | 市区町村の健康保険課 |
国民健康保険組合 | 特定の業種 | 組合担当者 |
後期高齢者医療制度 | 75歳以上 | 市区町村の健康保険課 |
わからない場合は、健康保険証の電話番号先へお問い合わせください。
「必要書類」は何ですか?
ご加入の公的医療保険によって異なります。それぞれの窓口へご相談ください。
「診断書」は必要ですか?
いいえ、医師の診断書は必要ありません。
その他の必要書類については、ご加入の公的医療保険の窓口へご相談ください。
診断書が必要なケース
診断書は以下の場合に必要になります。
- 「公費負担医療制度」の申請
- 「障害者手帳」の申請
- 「障害年金」の申請
- 「民間医療保険」の保険金受け取り申請
- 「都道府県民共済」の保険金受け取り申請
それぞれ専用の診断書が用意されていることが多いです。診断書を貰うために何度も病院へ行く手間を避けるため、できる限り退院や治療完了前に、確認することをお勧めします。
繰り返しになりますが、「限度額適用認定証」の申請には診断書は不要です。
「所得制限」はありますか?
所得制限はありませんが、所得に応じて上限額は変わります。
この記事の冒頭の例では、年収400万円のサラリーマンについて、がんの入院医療費100万円が、最終的に約9万円になるとご紹介しました。しかし実際には、もう少し細かく金額設定がされています。
年収別の目安上限額(1ヶ月ごと)
年収目安 | 自己負担限度額 | 多数該当 |
---|---|---|
年収1,200万円以上 | 25万円〜27万円 | 140,100円 |
年収800万円〜1200万円 | 17万円〜19万円 | 93,000円 |
年収400万円〜800万円 | 8万円〜10万円 | 44,400円 |
年収100万円〜400万円 | 57,600円 | 44,400円 |
年収100万円以下 | 35,400円 | 24,600円 |
(生活保護) | 0円 | 0円 |
ご自身がどこの区分かは、保険証の管理元(保険者)に問い合わせて確認しましょう。
上の表では「年収」と書いていますが、より正確に言うと、
- 被用者保険:標準報酬月額
- 国民健康保険:基礎控除後の総所得金額等
となります。
「年齢制限」はありますか?
年齢制限はありません。
ただし、限度額適用認定証(高額療養費制度)では、69歳まで・70歳〜74歳・75歳以上で計算方法が違います。よって、同じ医療費100万円でも、人によって安くなる金額が異なります。
「回数制限」はありますか?
いいえ、ありません。
限度額適用認定証は、一度入手すると1年間有効です。
更新も簡単ですので、一度入手された方は更新しいていくことをオススメします。
「家族の代理」で手続きできますか?
委任状が求められることもありますが、基本的に大丈夫です。
ご加入の公的医療保険の窓口へご相談ください。
「メリット」は何ですか?
医療費の自己負担金を軽減できることです。
最終的な自己負担金は、高額療養費制度を使った場合と同額です。
デメリットは何ですか?
特にありません。
強いて挙げるなら、クレジットカード払い時、ポイント付与が減ることです。限度額適用認定証を使わずに、一旦3割負担で支払いった方が、クレカのポイントは多くなります。
(クレカポイントを除いた最終的な自己負担額は同じです。)
高額療養制度は面倒な手続きが必要な上、払い戻しまで3〜4ヶ月かかります。基本的には限度額適用認定証を優先することをオススメします。
「高額療養費制度」との違いは何ですか?
主な違いは次の3点です!
- 窓口支払額
- 必要書類
- 手続き完了までの期間
限度額適用認定証 | 高額療養費制度 | |
---|---|---|
窓口支払額 | 少ない | 多い |
書類の記入項目 | 少ない | 多い |
手続き完了までの期間 | 即日〜1週間ほど | 3〜4ヶ月 |
窓口支払額
- がんで医療費100万円
- 高額療養費制度の場合:30万円
- 限度額適用認定証の場合:87,430円
書類の記入項目
高額療養費制度で3〜4ヶ月後に残りが振り込まれる
最終的な自己負担額は同じ
YouTube視聴者さんの体験談コメントをご紹介します!
手術終わって長期入院する時に病院の受付の方に、 高額ですが一旦全額クレジットカードで払って ポイントゲットして高額療養費制度使えばお得ですよと言われました(笑)
健保組合の場合、独自の付加給付を支給している所が多く、 自己負担額が更に下がったりします。 初めに限度額証で8万数千円負担し、その後、 各々の組合が設定している最終的な自己負担額との差額数万円が 付加給付金として支払われるという流れです。 (中には自己負担金が2万円程度という組合もあります) 条件により世帯合算などもできるので、 制度を利用する際は、 担当者に確認しておくことをオススメします。
「注意点」は何ですか?
限度額適用認定証の主な注意点は、以下の3点です。
- 申請から1週間ほどかかる。
- 申請しなければ適用されない。
- 保険適用外の医療費には使えない。
【注意点1】申請から1週間ほどかかる。
限度額適用認定証は、申請から手元に届くまで1週間ほどかかる場合があります。会計時に提示できなければ、一旦3割負担で支払うことになります。後から高額療養費制度で払い戻しを受けることはできますが、一時的な出費が大きくなります。余裕を持って申請するようにしましょう。
【注意点2】申請しなければ適用されない。
限度額適用認定証を利用するには、保険証の発行元へ申請をする必要があります。
自動的に安くなるわけではありません。高額な医療費がかかる場合は必ず限度額適用認定証を申請しましょう。入院前や手術前でも申請して入手することは可能です。つまり医療費がいくら必要かわからない段階でも大丈夫です。申請すれば1年間は有効ですので、身動きの取りやすいうちに申請することをお勧めします。
【注意点3】保険適用外の医療費には使えない。
限度額適用認定証では、「保険適用外」の治療や薬などは対象外となります。
以下の費用は対象とならず、全額自己負担となるのでご注意ください。
- 対象外
- 先進医療(例:がんの陽子線治療、重粒子線治療)
- 自由診療(例:美容整形、人間ドック)
- 差額ベッド代(個室、少人数部屋代)
- 入院時食事療養費(病院食のこと)
- 交通費、駐車場代
詳しくはこちら【限度額適用認定証の「対象外」とは?】
何故、同じ病気で外来と入院で別枠扱いされ、対象外になるのか
[…] 限度額適用認定証 […]
1か月の間に、入院・手術をします。その間に歯科医院に通った場合、限度額適用認定証を利用することはできますか。