傷病手当金|わかりやすく解説(申請方法・対象・対象外)

「傷病手当金」とは?

Q
傷病手当金とは、どのような制度ですか?
A

簡単に言うと、「病気やケガで会社を休んだとき、収入の2/3を受け取れる制度」です。

要点

  • 【1】病気やケガで仕事を休むときに貰えるお金
  • 【2】ざっくり収入の2/3が月1回振り込まれる
  • 【3】最長で1年6ヶ月分貰える

病気やケガのせいで連続4日以上働けないときに健康保険から支給されます。なお、業務中や通勤中に発生した病気やケガは「労災保険」の対象となります。最長1年6ヶ月貰えるため、大きな病気で入院した際などに心強い制度となります。ただし、傷病手当金は国民健康保険にはありません。つまり、サラリーマンや公務員の方は使えますが、自営業やフリーランスの方は原則利用できません。

「利用できる人」とは?

Q
傷病手当金を貰えるのは、どんな人ですか?
A

公的な医療保険のうち「被用者保険」に加入している人です。

簡単に言うと、勤務先から保険証を貰っている人です。

逆に、市役所や区役所から保険証を貰っている人は原則利用できません。

「被用者」とは「雇用されている人」の意味です。つまり、サラリーマンや公務員の方を指します。国民健康保険(国保)には、傷病手当金の制度はありませんので、自営業やフリーランスの方は残念ながら利用できません。(例外:コロナ特例)

傷病手当金公的医療保険
(保険者)
加入者
(被保険者)
相談窓口
組合健保サラリーマン(大企業)健康保険の担当部署
協会けんぽサラリーマン(中小企業)協会けんぽの管轄支部
共済組合公務員、私学教員共済担当者
×国民健康保険自営業、フリーター市役所等の健康保険課
国民健康保険組合特定の業種組合担当者
×後期高齢者医療制度75歳以上市役所等の健康保険課

ただし、国民健康保険の方でも、一部自治体では新型コロナウイルスに関する特例措置があります。

「支給条件」とは?

Q
傷病手当金の支給要件は、何ですか?
A

以下の5つの要件を、全て満たす必要があります。

傷病手当金の支給要件

【条件1】病気やケガの治療中である

Q
傷病手当金の「傷病」とは何ですか?
A

「病気やケガ」のことです。

病名やケガの場所などの指定はありません。また、3割負担となる保険適用の治療であっても、10割負担となる自費診療であっても対象となります。

傷病手当金は、あくまでも病気やケガで治療を受けて休む必要がある時の制度です。美容整形のような治療ではない医療には使えません。

【条件2】業務災害ではない

Q
「業務災害」とは何ですか?
A

仕事が原因で起きた、病気やケガです。

業務災害は「労災保険」の対象となります。傷病手当金の対象は、業務災害以外の病気やケガです。

【条件3】3日連続休む

「働けない」状態だと判断される必要があります。判断するのは医師です。自己判断や上司判断ではないことにご注意ください。

例えば、下記の例は「働ける」状態です。原則、傷病手当金の対象とはなりません。

傷病手当金NG例
  • 午前中だけなら働ける。
  • 時短勤務なら働ける。
  • テレワークなら働ける。
  • 配置転換すれば働ける。

病気やケガの時はしっかり休んでください!

業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、
4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。
待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。
また、就労時間中に業務外の事由で発生した病気やケガについて仕事に就くことができない状態となった場合には、その日を待期の初日として起算されます。

          
×休み出勤休み休み出勤出勤休み休み出勤
待機完成せず
休み休み休み出勤休み休み休み休み休み
待機完成傷病手当金
休み休み出勤休み休み休み休み休み休み
待機完成傷病手当金
「待期3日間」の考え方
引用:協会けんぽ

【条件4】3日連続休む

業務外の事由による病気やケガで休業している期間について生活保障を行う制度のため、
給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。
ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。
任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません。

詳しくはこちら【「報酬(給料)」との併給調整とは?

【条件5】

傷病手当金の「対象」とは?

傷病手当金の受給条件が満たせていれば、どのような病気やケガでも対象となります。

傷病手当金の「対象外」とは?

労災保険の対象

美容整形

3日間の待機が完成しない

給料などが支払われる

「支給金額」はいくら?

傷病手当金の金額は、以下のような計算方法で求めることができます。

1日当たりの金額:【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
                         (支給開始日とは、一番最初に傷病手当金が支給された日のことです。)

(※)支給開始日の以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算します。
     ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
     イ 標準報酬月額の平均額
        ・30万円(※):支給開始日が平成31年4月1日以降の方 
     ※当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額

等級標準報酬標準報酬月額傷病手当金日額
10 ~ 63,00058,0001,287
263,000 ~ 73,00068,0001,513
373,000 ~ 83,00078,0001,733
483,000 ~ 93,00088,0001,953
593,000 ~ 101,00098,0002,180
6101,000 ~ 107,000104,0002,313
7107,000 ~ 114,000110,0002,447
8114,000 ~ 122,000118,0002,620
9122,000 ~ 130,000126,0002,800
10130,000 ~ 138,000134,0002,980
11138,000 ~ 146,000142,0003,153
12146,000 ~ 155,000150,0003,333
13155,000 ~ 165,000160,0003,553
14165,000 ~ 175,000170,0003,780
15175,000 ~ 185,000180,0004,000
16185,000 ~ 195,000190,0004,220
17195,000 ~ 210,000200,0004,447
18210,000 ~ 230,000220,0004,887
19230,000 ~ 250,000240,0005,333
20250,000 ~ 270,000260,0005,780
21270,000 ~ 290,000280,0006,220
22290,000 ~ 310,000300,0006,667
23310,000 ~ 330,000320,0007,113
24330,000 ~ 350,000340,0007,553
25350,000 ~ 370,000360,0008,000
26370,000 ~ 395,000380,0008,447
27395,000 ~ 425,000410,0009,113
28425,000 ~ 455,000440,0009,780
29455,000 ~ 485,000470,00010,447
30485,000 ~ 515,000500,00011,113
31515,000 ~ 545,000530,00011,780
32545,000 ~ 575,000560,00012,447
33575,000 ~ 605,000590,00013,113
34605,000 ~ 635,000620,00013,780
35635,000 ~ 665,000650,00014,447
36665,000 ~ 695,000680,00015,113
37695,000 ~ 730,000710,00015,780
38730,000 ~ 770,000750,00016,667
39770,000 ~ 810,000790,00017,553
40810,000 ~ 855,000830,00018,447
41855,000 ~ 905,000880,00019,553
42905,000 ~ 955,000930,00020,667
43955,000 ~ 1,005,000980,00021,780
441,005,000 ~ 1,055,0001,030,00022,887
451,055,000 ~ 1,115,0001,090,00024,220
461,115,000 ~ 1,175,0001,150,00025,553
471,175,000 ~ 1,235,0001,210,00026,887
481,235,000 ~ 1,295,0001,270,00028,220
491,295,000 ~ 1,355,0001,330,00029,553
501,355,000 ~1,390,00030,887
傷病手当金・早見表

「支給日」はいつ?

Q
傷病手当金はいつ振り込まれますか?
A

初回は申請から2週間〜1ヶ月、2回目以降は1ヶ月ごとに振り込まれます。

傷病手当金は、健康保険の中の制度です。そのため、ご加入の健康保険によって、振込までの期間や、支給日は異なります。

傷病手当金の支給日は、一般的に申請日より2週間から1か月後です。

遅くなるケース
  • 書類に不備がある。
  • 審査に時間がかかっている。

書類に不備があると、初回の支給までに1ヶ月以上かかることもあります。申請時に貰える記入手本をよく確認し、ミスのないように慎重に記入しましょう。

ご不定点があれば、ご加入の公的医療保険の窓口へご相談ください。

「併給調整」とは?

傷病手当金以外にお金を受け取っている場合、傷病手当金の金額が減ったり貰えなかったりします。このように「用して受する時に調整」されることを併給調整といいます。

具体的には以下の6つがあります。

「報酬(給料)」との併給調整とは?

業務外の事由による病気やケガで休業している期間について生活保障を行う制度のため、
給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。
ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。
任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません。

「出産手当金」との併給調整とは?

平成28年4月から、傷病手当金の額が出産手当金の額よりも多ければ、
その差額を支給することになりました。

「障害厚生年金」との併給調整とは?

傷病手当金を受ける期間が残っていた場合でも、
同じ病気やケガで障害厚生年金を受けることになったときは、傷病手当金は支給されません。
ただし、障害厚生年金の額(同時に障害基礎年金を受けられるときはその合計額)の
360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

「障害手当金」との併給調整とは?

また、厚生年金保険法による障害手当金が受けられる場合は、
傷病手当金の額の合計額が、障害手当金の額に達する日まで傷病手当金は支給されません。

「老齢退職年金給付」との併給調整とは?

資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が老齢(退職)年金を受けているときは、傷病手当金は支給されません。
ただし、老齢(退職)年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

「労災保険(休業補償給付)」との併給調整とは?

過去に労災保険から休業補償給付を受けていて、
休業補償給付と同一の病気やけがのために労務不能となった場合には、傷病手当金は支給されません。
また、業務外の理由による病気やケガのために労務不能となった場合でも、
別の原因で労災保険から休業補償給付を受けている期間中は、傷病手当金は支給されません。
ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

「支給期間」はいつからいつまで?

傷病手当金は、病気やけがで休んだ期間のうち、最初の3日を除き(これを「待期」といいます。)4日目から支給されます。
その支給期間は、令和4年1月1日より、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月に変わりました。
ただし、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合は、いままでどおり支給を開始した日から最長1年6ヵ月までの期間になります。

shikyuukikan
引用:協会けんぽ
shoutekikankangaekata
引用:協会けんぽ

「申請手順」を教えてください。

傷病手当金の申請手順は以下の5ステップです。

【手順1】「支給申請書」を取り寄せる

まず、業務中以外に生じたケガや病気で療養中のため働けない状態にあることを会社に報告して、長期欠勤するむねを伝えます。その後、加入している公的医療保険の窓口に問い合わせて、傷病手当金支給申請書を取り寄せるのです。

保険者によっては、ホームページ上からダウンロードできる場合もあります。

【手順2】「被保険者記入用」を自分で記入する

傷病手当金の支給申請書にある被保険者記入用の部分を作成します。記入は、被保険者本人または、被保険者が亡くなった場合は相続人が行い、主な記入項目は次のとおりです。

  • 被保険者証の記号、番号または個人番号
  • 被保険者の業務の種別、期間
  • 被保険者の住所、氏名、連絡先
  • 振込先指定口座
  • 相続人が申請する際には代理人の住所、振込口座
補足
  • 被保険者=あなた
  • 保険者=保険証の発行元

【手順3】「療養担当者記入用」の記入を医師に依頼する

傷病手当金の支給申請書にある療養担当者の部分は、担当の医師に記入を依頼します。主な記入項目は次のとおりです。

  • 傷病名、その原因、発病または負傷の初診の年月日
  • 治療機関ではなく、療養のため労務に服することができない期間と日数、見込み期間など
  • 医師意見書(症状、経過、労務不能と認められた医学的な所見を詳細に記入する)

【手順4】「事業主記入用」の記入を会社に依頼する

傷病手当金の支給申請書にある事業主記入用の部分は、事業主に記入を依頼します。主な記入項目は次のとおりです。

  • 労務に服することができなかった期間を含む賃金計算期間(賃金計算の締日の翌日から締日の期間)の勤務状況
  • 給与の種類
  • 賃金計算の締日または賃金の支払日
  • 労務に服することができなかった期間を含む賃金計算期間の賃金支給状況

【手順5】「支給申請」をして傷病手当金を受給する

傷病手当金の支給申請書は、下記の合計4枚となります。

  • 被保険者が記入するページ:2枚
  • 療養担当者が記入するページ:1枚
  • 事業主が記入するページ:1枚

すべての書類がそろったら加入している医療保険者へ傷病手当金の支給申請を提出して手続きは終わりです。一般的に支給申請は、会社を経由して行うとされますが、被保険者本人が直接郵送しても問題ありません。

あとは傷病手当金が振り込まれるのを待ちましょう。

お仕事のことは一旦忘れて、どうかゆっくり休んでください。

「申請費用」はいくら?

申請そのものに費用はかかりません。

「相談窓口」はどこ?

ご加入の公的医療保険の窓口です。

傷病手当金公的医療保険
(保険者)
加入者
(被保険者)
相談窓口
組合健保サラリーマン(大企業)健康保険の担当部署
協会けんぽサラリーマン(中小企業)協会けんぽの管轄支部
共済組合公務員、私学教員共済担当者
×国民健康保険自営業、フリーター市区町村の健康保険課
国民健康保険組合特定の業種組合担当者
×後期高齢者医療制度75歳以上市区町村の健康保険課

わからない場合は、健康保険証の電話番号先へお問い合わせください。

「必要書類」は何ですか?

ご加入の公的医療保険の窓口にお問合せください。

「診断書」は必要ですか?

いいえ、医師の診断書は必要ありません。

傷病手当金の申請に必要なのは、「診断書」ではなく「傷病手当金支給申請書の療養担当者(医師)記入用」です。似て非なる書類ですのでご注意ください。

Q
医師の診断書を、傷病手当金支給申請書の療養担当者(医師)記入用に代用できますか?
A

いいえ、代用できません。

その他の必要書類については、ご加入の公的医療保険の窓口へご相談ください。

診断書が必要なケース

診断書は以下の場合に必要になります。

診断書が必要なケース
  • 「公費負担医療制度」の申請
  • 「障害者手帳」の申請
  • 「障害年金」の申請
  • 「民間医療保険」の保険金受け取り申請
  • 「都道府県民共済」の保険金受け取り申請

それぞれ専用の診断書が用意されていることが多いです。診断書を貰うために何度も病院へ行く手間を避けるため、できる限り退院や治療完了前に、確認することをお勧めします。

繰り返しになりますが、「傷病手当金」の申請には診断書は不要です。

「所得制限」はありますか?

いいえ、所得制限はありません。

「年齢制限」はありますか?

いいえ、年齢制限はありません。

「回数制限」はありますか?

いいえ、回数制限はありません。

「家族の代理」で手続きできますか?

「メリット」は何ですか?

「デメリット」は何ですか?

「注意点」とは?

「新型コロナ」でも貰えますか?

「有給休暇」中でも貰えますか?

「退職後」も貰えますか?

「任意継続」でも貰えますか?

Q
任意継続でも傷病手当金は貰えますか?
A

いいえ、貰えません。

Q
任意継続とは何ですか?
A

会社を退職するときに、元の会社の健康保険に引き続き加入できる仕組みです。

「特例退職被保険者」でも貰えますか?

「体験談」を教えてください。

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