高額療養費制度|わかりやすく解説(申請方法・対象・対象外)

高額療養費制度の概要

Q
高額療養費制度とは何ですか?
A

「医療費が高額になったときに、一定額を払い戻してくれる制度」です。

医療費が3割負担になることを「保険が効く」と言います。保険が効く治療や薬であれば、病気の種類に関係なく制度を利用できます。健康保険証の発行元に申請すると利用できます。一般的な年収の方の場合、1ヶ月の自己負担額が6〜10万円を超えると、超えた分が約3ヶ月後に払い戻されます。キャッシュバックのイメージです。

高額医療費制度と表記されることもありますが、正しくは高額療養費制度です。

具体例

Q
具体例を教えてください。
A

大腸がんの手術で2週間入院した例をご紹介します。

このとき、医療費が100万円かかるとします。保険が効く治療なので、3割負担だと30万円になります。退院の時に一旦30万円を支払います。高額療養費制度を申請して、約21万円が3〜4ヶ月後に払い戻しされます。最終的な自己負担額は約9万円で済みます。

(正確には、87,430円です)

実際の金額は、収入の状況などによって異なります。

利用できる人

Q
高額療養費制度が使えるのは、どのような人ですか?
A

公的な医療保険に加入していて、保険料の滞納がない人です。

高額療養費制度
利用できる人
  • 公的医療保険に加入している(保険証を持っている)
  • 保険料を滞納していない

対象

Q
高額療養費制度の対象を教えてください。
A

対象となるのは「保険適用」の「高額」な医療費です。

高額少額
保険適用×
保険適用外××

保険が効く治療や薬であれば、全て対象です。「保険が効く(保険適用)」とは、3割負担で受けられる治療のことです。

例えば、三大疾病(がん・脳卒中・心筋梗塞)だと、おおよそ下記の金額となります。(年収400万円のサラリーマンの場合)

総医療費
(10割)
自己負担額
(高額療養費制度 適用)
がん100万円約9万円
脳卒中200万円約10万円
心筋梗塞200万円約10万円

有名な病気は、ほとんど保険が効く治療法や薬を使います。仮に保険外の治療が行われるとしても、患者さんの同意なく行われることはありません。ただし、あくまでも高額になった場合に使える制度なので、普通のインフルエンザ治療のように数千円で済む治療には使えません。

対象外となる医療費

Q
高額療養費制度が使えない医療費を教えてください。
A

保険適用外の医療費には使えません。

以下の費用は対象とならず、全額自己負担となるのでご注意ください。

例えば、がんの手術で2週間入院したとします。

月を跨がず入院した場合、医療費100万円とすると、高額療養費制度を使って最終的な自己負担金額は約9万円です。しかし、入院中の病院食は通常1食460円の自己負担がかかります。単純計算で、1日3食×14日間とすると19,320円かかります。つまり、実質の自己負担額は、治療費約9万円+食事代約2万円=約11万円となります。

病院食自己負担額
1食460円
1日1380円
1週間約1万円
2週間約2万円
1ヶ月約4万円
病院食代の目安

入院時に、1日3,000円の差額ベッド代がかかる個室に入った場合、2週間で3,000円×14日=42,000円が追加でかかります。

また、高額療養費制度は、3割負担でも高額になった時のための制度です。逆に言うと、3割負担にならない医療費には適用されません。

医療費の節約効果

Q
いくら医療費が安くなりますか?
A

自己負担上限額を超えた分が安くなります。

(例)全国健康保険協会(協会けんぽ)、年収400万円

がん治療で2週間入院して、医療費が100万円かかったとします。(この100万円は、3割負担にする前、つまり10割計算の金額です。)この場合、最終的に212,570円安くなり、自己負担額は87,430円となります。

医療費 
10割計算1,000,000円
3割計算300,000円
払戻額-212,570円
自己負担額87,430円

この計算について、順を追って解説します。まず、通常の自己負担金は、100万円の3割負担計算で30万円です。しかし、年収400万円の人にとって自己負担30万円は「高額」のため、高額療養費制度の自己負担限度額が適用されます。この人に適用される計算式は、以下の通りです。

80,100円+(総医療費-267,000円)×1%

この式は、「80,100円までは3割負担で頑張っていただきますが、それ以上は高額なのでほとんど増えないようにします。」といった意味合いです。よって、改めてこの式に総医療費100万円を入れると、

80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円

となります。元々の3割計算30万円と、この87,430円の差額212,570円分が安くなります。この差額212,570円を「高額療養費」と言い、3〜4ヶ月後に払い戻しされます。

全国健康保険協会(協会けんぽ)のWEBサイトで計算することができます。

高額療養費簡易試算(平成27年1月診療分から:70歳未満用) | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

なお、年収(計算上は標準報酬月額)と上限額の関係は、下記の表の通りです。上記の例は「③区分ウ」に該当します。

(国民健康保険の方は、所得の計算方法が異なります。)

所得区分自己負担限度額多数該当※2
① 区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)
(報酬月額81万円以上の方)
252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1%140,100円
② 区分イ
(標準報酬月額53万〜79万円の方)
(報酬月額51万5千円以上〜81万円未満の方)
167,400円+(総医療費※1-558,000円)×1%93,000円
③ 区分ウ
(標準報酬月額28万〜50万円の方)
(報酬月額27万円以上〜51万5千円未満の方)
80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1%44,400円
④ 区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)
(報酬月額27万円未満の方)
57,600円44,400円
⑤ 区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
35,400円24,600円
70歳未満の方の区分
  1. ※1総医療費とは保険適用される診察費用の総額(10割)です。
  2. ※2療養を受けた月以前の1年間に、3ヵ月以上の高額療養費の支給を受けた(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)場合には、4ヵ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減されます。

「区分ア」または「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分ア」または「区分イ」の該当となります。

払い戻しのタイミング

Q
いつ払い戻されますか?
A

申請後、3〜4ヶ月後に銀行口座に振り込まれます。

医療費が安くなる高額療養費制度ですが、実際には一旦3割負担して、後から払い過ぎた分が戻ってくる仕組みとなっています。つまり、例えばがんの手術入院が100万円だとすると、退院するときに一旦3割の30万円を病院に払います。そして、高額療養費制度の申請をすることによって、3〜4ヶ月後に払い過ぎた21万円が戻ってきて、最終的には9万円で済んだ計算となります。

申請先は、皆さんの健康保険証に書いてある連絡先です。加入している健康保険によっては、手続きなしで自動で振り込まれます。高額療養費制度は治療後2年間有効なので、焦らずしっかり手続きをしましょう。なお、事前に高額な医療がかかるとこがわかった時や、退院などの支払いタイミングまで1週間ほと時間があるときは、「限度額適用認定証」を申請して入手しましょう。限度額適用認定証があれば、高額療養費制度が適用された状態の金額での支払いで済みます。

過去に支払った医療費

Q
既に支払った医療費をあとから請求できますか。
A

2年以内であれば請求できます。

また、年間10万円以上の自己負担額が発生した場合は、医療費控除の対象となります。翌年の確定申告時に医療費控除を申請することで、所得控除が受けられます。併せてご利用ください。

申請費用

Q
申請に費用はかかりますか?
A

いいえ、申請費用はかかりません。

相談窓口

Q
どこに相談をすればいいですか?
A

ご加入の公的な医療保険の窓口です。

公的医療保険
(保険者)
加入者
(被保険者)
相談窓口
組合管掌健康保険
(組合健保)
サラリーマン
(大企業)
担当部署
全国健康保険協会
(協会けんぽ)
サラリーマン
(中小企業)
協会けんぽ
管轄支部
共済組合公務員
私学職員
共済担当者
船員保険船員全国健康保険協会
船員保険部
国民健康保険自営業
フリーター等
市役所・区役所
健康保険課
国民健康保険組合特定の同業種担当部署
後期高齢者医療制度75歳以上の方市役所・区役所
健康保険課

わからない場合は、健康保険証の電話番号先へお問い合わせください。

必要書類

Q
必要書類を教えてください。
A

ご加入の公的医療保険によって異なります。それぞれの窓口へご相談ください。

必要書類の例

【例1】協会けんぽ

・高額療養費支給申請書
・住民税非課税証明書(被保険者の住民税が非課税の場合)

引用:「協会けんぽ」ホームページ

【例2】国民健康保険(大阪市)

・保険証、 医療機関等の領収書
・特定疾病療養受療証(お持ちの方)
・マイナンバーが確認できるもの(マイナンバーカード、通知カード、マイナンバーの記載された住民票写し など)
・本人確認資料(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート など)
・世帯主名義の金融機関口座通帳(または振込口座のわかる書類)

※医療機関等の領収書を提出できない場合は、「高額療養費支給申請にかかる申立書(同意書)」をご提出ください。

引用:「大阪市」ホームページ

診断書

Q
医師の診断書は必要ですか?
A

いいえ、必要ありません。

ただし、他の制度を利用する際に診断書が必要となるケースがあります。

診断書が必要なケース
  • 「公費負担医療制度」の申請
  • 「障害者手帳」の申請
  • 「障害年金」の申請
  • 「民間医療保険」の保険金受け取り申請
  • 「都道府県民共済」の保険金受け取り申請

それぞれ専用の診断書が必要です。診断書のために何度も病院へ行く手間を避けるため、できる限り退院や治療完了前に、確認することをお勧めします。

所得制限

Q
所得制限はありますか?
A

所得制限はありませんが、所得によって自己負担上限額は変わります。

この記事の冒頭の例では、年収400万円のサラリーマンについて、がんの入院医療費100万円が、最終的に約9万円になるとご紹介しました。しかし実際には、もう少し細かく金額設定がされています。

年収別の目安上限額(1ヶ月ごと)

年収目安自己負担限度額多数該当
年収1,200万円以上25万円〜27万円140,100円
年収800万円〜1200万円17万円〜19万円93,000円
年収400万円〜800万円8万円〜10万円44,400円
年収100万円〜400万円57,600円44,400円
年収100万円以下35,400円24,600円
生活保護0円0円
70歳未満の方の区分

ご自身がどこの区分かは、保険証の管理元(保険者)に問い合わせて確認しましょう。

上の表では「年収」と書いていますが、より正確に言うと、

  • 被用者保険:標準報酬月額
  • 国民健康保険:基礎控除後の総所得金額等

となります。

年齢制限

Q
年齢制限はありますか?
A

年齢制限はありませんが、年齢によって高額療養費制度の計算方法が異なります。

高額療養費制度では、69歳まで・70歳〜74歳・75歳以上で計算方法が違います。よって、同じ医療費100万円でも、人によって安くなる金額が異なります。

回数制限

Q
回数制限はありますか?
A

いいえ、ありません。

医療費の計算はカレンダーの月ごとの計算となります。(1月分・2月分・3月分・・・)

治療によっては毎月のように高額医療となることもあり得ますが、回数制限はないので安心して利用できます。むしろ、毎月高額療養費制度を使うようなケースでは、4ヶ月目以降さらに半額くらいまで軽減されます。この軽減される仕組みを「多数該当」または「多数回該当」といいます

代理手続き

Q
家族の代理で手続きできますか?
A

委任状が求められることもありますが、基本的に大丈夫です。

ご加入の公的医療保険の窓口へご相談ください。

メリット

Q
高額療養費制度のメリットを教えてください。
A

医療費の自己負担額を軽減できることです。

最終的な自己負担金は、限度額適用認定証を使った場合と同額です。

デメリット

Q
高額療養費制度のデメリットを教えてください。
A

医療費の払い戻しが申請後3〜4ヶ月後になることです。

病院へは、一旦3割負担分を支払う必要があります。

自動車保険のように、使うほど保険料が上がるといったこともありません。

「注意点」は何ですか?

Q
注意点は何ですか?
A

主な注意点は、以下の3点です。

【注意点1】払い戻しまで、3〜4ヶ月かかる。

高額療養費制度は、申請から払い戻しまで少なくとも3ヶ月かかります。

医療費100万円の場合、212,570円が3〜4ヶ月後に払い戻しされますが、病院へは一旦30万円を支払う必要があります。

医療費 
10割計算1,000,000円
3割計算300,000円
払い戻し額
(3~4ヶ月後)
-212,570円
自己負担額87,430円

詳しくはこちら【高額療養費制度でも払えないときは?

【注意点2】申請しなければ適用されない。

高額療養費制度で医療費の払い戻しを受けるには、申請手続きが必要です。

自動的に安くなるわけではありませんのでご注意ください。高額療養費制度は、治療が終わったあとからでも申請できます。治療後2年以内に手続きをすれば、払い戻しが受けられます。

なお、公務員の共済組合や、大企業の組合健保など、一部の公的医療保険では自動的に払い戻しされます。協会けんぽや国民健康保険の方は、申請が必要です。不安な場合は、保険証の発行元へ問い合わせてご確認ください。

【注意点3】保険適用外の医療費には使えない。

高額療養費制度では、「保険適用外」の治療や薬などは対象外となります。

以下の費用は対象とならず、全額自己負担となるのでご注意ください。

詳しくはこちら【対象外となる医療費

多数該当(多数回該当)

Q
多数該当(多数回該当)とは何ですか?
A

高額療養費制度を3回使うと、4回目からさらに自己負担額が下がる仕組みです。

抗がん薬や、抗リウマチ薬のような値段の高い治療を毎月使う場合は、この多数該当を利用できます。

世帯合算

Q
世帯合算とは何ですか?
A

高額療養費制度の計算を、世帯で合計することができる仕組みです。

長期高額疾病

Q
長期高額疾病とは何ですか?
A

高額療養費制度の自己負担上限額が月額1万円となる病気です。

一部の病気の治療費は、1ヶ月の自己負担上限額が1万円になります。

  • 透析
  • 血友病
  • HIV

高所得の透析患者さんは月額1万円ではなく月額2万円になります。

医療費控除

Q
医療費控除との違いは何ですか?
A

高額療養費制度「医療費」の節約制度、

医療費控除「税金」の節約制度です。

医療費そのものを節約するのが「高額療養費制度」で、かかった医療費をもとに節税するのが医療費控除です。

住民税非課税世帯

Q
住民税非課税世帯の場合は、更に安くなりますか?
A

はい、通常よりも自己負担上限額が安くなります。

住民税非課税世帯の方は、高額療養費制度の自己負担上限額が下がり、1ヶ月の自己負担額は最大35,400円となります

下記表の「⑤ 区分オ(低所得者)(被保険者が市区町村民税の非課税者等)」に該当します。

所得区分自己負担限度額多数該当※2
① 区分ア
(標準報酬月額83万円以上の方)
(報酬月額81万円以上の方)
252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1%140,100円
② 区分イ
(標準報酬月額53万〜79万円の方)
(報酬月額51万5千円以上〜81万円未満の方)
167,400円+(総医療費※1-558,000円)×1%93,000円
③ 区分ウ
(標準報酬月額28万〜50万円の方)
(報酬月額27万円以上〜51万5千円未満の方)
80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1%44,400円
④ 区分エ
(標準報酬月額26万円以下の方)
(報酬月額27万円未満の方)
57,600円44,400円
⑤ 区分オ(低所得者)
(被保険者が市区町村民税の非課税者等)
35,400円24,600円
70歳未満の方の区分

また、入院時の食事代について減額されます。通常の料金の半額以下まで減額されます。この病院食の減額を「標準負担額減額認定」と言います。

病院食代
(自己負担額)
住民税非課税世帯その他
1食210円460円
1日630円1380円
1週間約4,500円約1万円
2週間約9,000円約2万円
1ヶ月約19,000円約4万円

なお、病院食代については、高額療養費制度の対象外です。

三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)

Q
三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)に使えますか?
A

はい、使えます。

三大疾病は、治療費が高額になります。高額療養費制度で医療費の払い戻しを受けるとこもできますが、事前に「限度額適用認定証」を入手することをお勧めします。

生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)

Q
生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)に使えますか?
A

はい、使えます。

ただし、通常の通院治療では高額療養費制度の適用金額まで達しないケースが多いです。

月に1〜2回の通院して薬の処方を受ける場合、高額療養費制度の適用金額まで達しないケースがほとんどです。

糖尿病の治療のため入院を行うなど、医療費が高額になる場合は高額療養費制度が使えます。

ただし、生活習慣病は三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)のリスクとなります。万が一に備えて、事前に「限度額適用認定証」を入手することをお勧めします。

生活習慣病の中でも、状態が悪化している場合は、他の公的制度の支援を受けられる可能性があります。

精神疾患(うつ病・統合失調症など)

Q
精神疾患(うつ病・統合失調症など)に使えますか?
A

はい、使えます。

ただし、通院治療の場合は「自立支援医療制度(精神通院)」の方が医療費の節約効果が大きいです。

うつ病などの精神疾患の方は「自立支援医療(精神通院)」という公費負担医療制度が使えます。市区町村の窓口で申請すれば使えるようになり、自己負担額が1割に軽減されます。入院治療には使えず、通院治療限定の制度ですが、ぜひ利用いただきたい制度です。入院治療を行う場合は、高額療養費制度を利用できます。

指定難病(潰瘍性大腸炎・ALSなど)

Q
指定難病(潰瘍性大腸炎・ALSなど)に使えますか?
A

はい、使えます。

ただし、「特定医療費(指定難病)」という制度の方が医療費の削減効果が大きいです。

指定難病の診断が付いた方は「特定医療費(指定難病)」という公費負担医療制度が使えます。申請して適用されることで、1ヶ月の自己負担額が5,000円〜10,000円ほどで上限となります。上限額は収入によって異なります。指定難病の方にとって、高額療養費制度より手厚い制度となります。

自由診療(例:美容整形、人間ドック)

Q
自由診療(例:美容整形、人間ドック)に使えますか?
A

いいえ、使えません。

自由診療(自費診療)は保険適用外の医療です。高額療養費制度は使えません。かかる費用は全て自己負担となりますので、ご注意ください。

なお、保険が効かない自由診療であっても、一部は医療費控除の対象となります。詳しくは下記のページをご覧ください。

先進医療(陽子線治療・重粒子線治療など)

Q
先進医療(陽子線治療・重粒子線治療など)に使えますか?
A

いいえ、使えません。

先進医療は保険適用外の治療です。高額療養費制度の対象は、保険適用の治療のため先進医療の治療費には使えません。ただし、先進医療そのものは保険適用外ですが、保険適用の治療と一緒に行うことが認められています。そのため、保険適用の部分には高額療養費制度が使えます。

例えば、がん治療で先進医療を使うとします。

先進医療の費用が100万円、入院代などの保険適用分が100万円、合計200万円とします。この時の自己負担額を考えます。まず、先進医療は保険適用外のため高額療養費制度が使えず、100万円はそのまま自己負担額となります。一方、入院代等の保険適用の治療費には高額療養費制度が使えるため、一般的な方の収入で計算すると87,430円となります。治療全体の自己負担額は100万円+87,430円=1,087,430円となります。


がん治療
先進医療
(保険適用外)
入院代等
(保険適用)
合計
10割計算1,000,000円
(100万円)
1,000,000円
(100万円)
2,000,000円
(200万円)
自己負担額1,000,000円
(100万円)
87,430円
(約9万円)
1,087,430円
(約109万円)

差額ベッド代(個室料金)

Q
差額ベッド代(個室料金)に使えますか?
A

いいえ、使えません。

差額ベッド代は保険適用外の費用です。高額療養費制度の対象は、保険適用の治療費のため差額ベッド代には使えません。ただし、差額ベッド代そのものは保険適用外ですが、保険適用の治療と一緒に行うことが認められています。そのため、保険適用の部分には高額療養費制度が使えます。

例えば、30日(29泊30日)入院するとします。

ここではシンプルに考えるため、手術や薬代は無しで、入院ベッド代のみを考えます。差額ベッド代が1日5千円、保険適用の基本入院料が1日2万円とします。30日分を計算すると、差額ベッド代が15万円、基本入院料が60万円、合計75万円です。この時の自己負担額を考えます。まず、差額ベッド代は保険適用外のため高額療養費制度が使えず、15万円はそのまま自己負担額となります。一方、保険適用の基本入院料には高額療養費制度が使えるため、一般的な方の収入で計算すると83,430円となります。入院代全体の自己負担額は15万円+83,430円=233,430円となります。

30日間入院差額ベッド代
(保険適用外)
基本入院料
(保険適用)
合計
1日分5,000円
(5千円)
20,000円
(2万円)
25,000円
(2.5万円)
30日分150,000円
(15万円)
600,000円
(60万円)
750,000円
(7.5万円)
自己負担額150,000円
(15万円)
83,430円
(約8万円)
233,430円
(約23万円)

入院時食事療養費(病院食)

Q
入院時の食事代に使えますか?
A

いいえ、使えません。

通常1食460円の自己負担が必要です。

例えば、がんの手術で2週間入院したとします。

月を跨がず入院した場合、医療費100万円とすると、高額療養費制度を使って最終的な自己負担金額は約9万円です。しかし、入院中の病院食は通常1食460円の自己負担がかかります。単純計算で、1日3食×14日間とすると19,320円かかります。つまり、実質の自己負担額は、治療費約9万円+食事代約2万円=約11万円となります。

病院食
自己負担額
標準指定難病
小児慢性特定疾患
住民税
非課税世帯
1食460円260円210円
1日
(3食)
1,380円780円630円
1週間
(7日)
約1万円
(9,960円)
5,460円4,410円
2週間
(14日)
約2万円
(19,320円)
10,920円8,820円
1ヶ月
(30日)
約4万円
(41,400円)
23,400円18,900円

交通費・駐車場代

高額療養費制度でも払えない場合

Q
高額療養費制度でも払えないときは、どうすればいいですか?
A

主な対処法は、以下の7つです。

【対処法1】限度額適用認定証

入院前や、退院まで1週間ほど時間がある場合は、「限度額適用認定証」を入手しましょう。保険証の発行元へ申請することで手元に届きます。退院時の支払いまでに提示できれば、支払いが最少額で済みます。上記の医療費100万円の例では、退院時に一旦30万円を支払う必要がなくなり、87,430円を支払えば精算完了となります。

実際には食事代等の費用が別途かかります。

【対処法2】高額医療費貸付制度

「協会けんぽ」などの一部の公的医療保険で利用できます。限度額適用認定証が間に合わなかった場合に、自己負担金の一部を無利子で借りることができます。

【対処法3】生活福祉資金貸付制度

医療費の自己負担分について、行政の窓口から融資を受ける制度です。相談窓口は、お住まいの地域の「社会福祉協議会」です。

【対処法4】給料の前払い(非常時払い)

既に働いた分の給料は、給料日より前に受け取ることができます。このような給料の前払いを「非常時払い」といいます。病気やケガで治療費などが必要な場合は、勤務先に相談しましょう。

使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。

労働基準法 第二十五条

【対処法5】分割払い(クレジットカード)

多くの病院はクレジットカード払いに対応しています。クレジットカードで分割払いを行う方法もあります。ただし、分割払いの場合は分割手数料がかかるため、最終的な自己負担額は増えます。十分ご注意ください。

【対処法6】分割払い(病院対応)

病院によっては、分割払いに対応してくれるケースもあります。病院の職員さんへご相談ください。

【対処法7】医療ローン

銀行などの金融機関から融資を受けます。金利が発生するため、当サイトでは推奨していません。家族や親戚や友人からの支援を受け、上記の制度を最大限活用した上での最終手段とお考えください。

体験談

Q
体験談を教えてください。
A

以下のページをご覧ください。

【痔】24歳/男(本人)/国民健康保険

1~2週間の入院費、痔の原因を調べる検査費、 血液検査、点滴代などを含めて、 合計で95,000円くらいかかりました。 あとはテレビ代、病院までの移動費(兵庫北部→大阪)などもあったので、 合計金額は100,000円を超えました。

上限を超えた分については、すぐに返却されるわけではありません。 お金に困っていた場合については、生活費を切り詰める必要があります。 手続きは自分でする必要があるため、 いまいちよくわからなかった記憶があります。誰かに聞くとよいでしょう。

高額医療保険の制度は手続きをしておくことで、 上限金額ですむようになります。 全額を払わないためにも、高額医療を受けるときは調べておくことをおすすめします。 どうしても間に合わないときのことを考えて、お金に余裕を持たせておきましょう。 生活がぎりぎりという人は、病院代を払えなくなってしまいます。

コメント

  1. 河内美千子 より:

    限度額認定証について、有効期限内に住民税非課税となった場合、区分は変更されますか?

タイトルとURLをコピーしました